名古屋で研究発表しました!
日本映像学会ショートフィルム研究会第25回にて研究発表をしてきました。
今回登壇したショートフィルム研究会は、日本映像学会に所属する研究会の一つです。
これまでの活動内容や、今後のスケジュールなどは、こちらのサイトでご覧いただけます。
今回の研究会は他にも、NHK放送文化研究所の宮田章さん、
名古屋大学大学院の中根若恵さんが登壇されました。
司会は、コミューンのメンバーMasatoが担当しました!
(そういえば、企画でコラボするのは初めてでした・笑)
このようにテレビドキュメンタリーについての研究会が開催されるのは、
国内では本当に貴重な機会なのですが、そのような場に呼んでいただけてとても嬉しかったです。
今回の発表では、初期テレビ・ドキュメンタリーと言われるNHK『日本の素顔』(1957-64)から、
1958年1月5日に放送された「日本人と次郎長」を題材に、
この番組の切り開いたテレビの可能性とドキュメンタリー表現の可能性を、
技術的歴史的な背景を踏まえながら報告しました。
宮田さんの報告は、テレビ草創期から現在までの制作技術の進化が、
どのように表現を変容・変質させたのかというとても示唆的なものでした。
大きなビジョンを示していただくと、目の前の一つ一つの番組を見る目が変わりますし、
自分の研究をどう歴史的・学術的に位置づけられるのかという考察が可能になります。
宮田さんには、いつも私の研究に対してたくさんエールを送っていただいているのですが、
それに応えられるよう着実に前進したいと改めて思いました。
それから、中根さんの報告は、
私がまだほとんど手をだせていない現代のドキュメンタリー番組を考察されたもので、
たくさんの気づきがありました。
客観的な語りから、極私的な語りへ。
こう書くとドキュメンタリー史的には「日本もそうなんだ」と言われそうですが、
ことはそう簡単ではありません。
フィールドワークして、他者を通じて自己を理解するという手法を克服するというのが、
セルフドキュメンタリーの特徴の一つです。
それは被写体の内省や独白を記録するために親密な空間に入ることを可能にするアプローチではありますが、
今回見た番組ではその反面、ありきたりな結論へと収斂してしまうという落とし穴があることに気づかされました。
このように映画学とテレビ研究の知見の交流が進むなかで、
従来の理論・概念枠組みでは取りこぼしてきたテレビドキュメンタリーの豊かさや制限といった問題を
議論する空間が立ち上がってきました。
今日の発表を通じて、こうした課題をクリアに議論していけるようにするぞ!と、気合いが入りました。
そして最後になってしまいましたが、快く会場をご用意くださったシアターカフェさん、
様々な意見をくださったり、研究の可能性を示してくださった来場者のみなさまに感謝しています。
登壇者を代表して御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
今回、シアターカフェさんで上映していただいた番組を簡単に紹介します。
『極私的にっぽんリアル:母になる』 2014年6月1日放送 ディレクター中井佐和子
(概要)お産を目前に控え、奈良の実家に里帰りした「私」。母になる日を楽しみにしつつ、実家でずっと気になっていたことをカメラで記録し始めた。それは、かつてこの家にいた異なるタイプの母たちのこと。一人は外でバリバリ働くキャリアウーマンだった「私」の祖母で、もう一人は、アーティスト活動をやめ、子育てに専念するために専業主婦として生きた「私」の母。やっとディレクターとして独り立ちした「私」は、祖母と母のそれぞれ異なる母親像に興味を持ち、家族と自分にカメラを向けることに。家族を通して「私」が考えた「母になる」までの記録。
『日本の素顔』(1957-64)より「第8集日本人と次郎長」 1958年1月5日放送 構成吉田直哉
(概要)テレビ・ドキュメンタリーの原点といわれる『日本の素顔』。戦後のラジオで誕生した録音構成の手法をテレビに取り入れ、テレビにおける新しい表現を模索した番組。8集目に放送された「日本人と次郎長」は、ヤクザの生活や物の考え方を通して、日本の社会に残る因習を浮き彫りにしようとした。当事者による襲名披露や手打ちの儀式にも目を惹かれるが、やくざの親分が集まって違法賭博に興じる場面は見もの。
『NHK短編映画 ぼくらの家』 1955年5月5日放送
(概要)家と家族を失った子供達が共に暮らしている家には、いつも笑顔で溢れている。子供たちは、保母たちと衛生的で健康的な生活を送るだけでなく、自ら勉強に励み、境遇に屈することなくよりよき社会人になるために努力している。社会に出て立派に大学に通っている「先輩」は、子供達の憧れ。そんな「ぼくらの家」を記録したテレビジョン映画。
『和賀郡和賀町-1967年 夏-』 1967年11月1日放送 ディレクター工藤敏樹
(概要)岩手県の穀倉地帯に位置する和賀町。都会に様々な理由で出ている人々が一斉に帰省してくるお盆の夏の記録。その表現スタイルから、伝説的に語られる番組。日本の典型的な農村を舞台にして、村の日常から、高度成長期の農業や農村が抱える問題、そして薄れつつある敗戦の記憶を見つめる。
次は、SCMSに登壇するメンバーとAASに登壇するメンバーから、
報告してもらうことになっています。
英語圏の学会は2月〜3月が学会シーズンなのですが、オモロー日記をお楽しみに!
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