ドキュドラ研究会に行ってきました!

こんにちは!ドキュメンタリー映画や番組、映像文化を研究しているMasatoです。


先日、千葉商科大学で行われた第四回ドキュメンタリードラマ研究会にYukiと参加したので、

その模様をレポートします。


ドキュメンタリードラマ研究会は、日本映像学会に所属する研究会の一つです。

研究会の趣旨や、今後の活動スケジュールなどは、こちらのサイトでご覧いただけます。

簡単にその活動を紹介すると、ドキュメンタリーとドラマの「融合」に着目する研究会です。


この研究会には初めて参加したのですが、70年代に放送された貴重なテレビ番組に数多く触れることができました。


一番最初は、コミューンメンバーのTomiが『お荷物小荷物』について発表しました。

見たことも、番組それ自体知らない方も多いと思うので、番組も紹介しながら報告していきましょう。


朝日放送『お荷物小荷物』(1970~71年)

物語は、祖父、父、息子5人の男性だけの家族に復讐する沖縄出身の家政婦の話。

ただ登場人物の性格はとても面白くて、この家族は男尊女卑の思想の持ち主で、

主人公の中山千夏扮する家政婦・菊にセクハラしたり、暴言を吐いたりやりたい放題。

当時、「幸せ家族」を描くホームドラマが流行していたことを踏まえると、

このドラマは、「脱・ホームドラマ」と呼ぶべき要素にあふれています。


また、「お荷物小荷物」は当時から「脱ドラマ」という呼び方でも評価されていました。

たとえば、俳優たちが演じる役を抜け出して自由に語り始めたり、

物語を中断するように視聴者ファンが群がる中に出演者が分け入っていったり、

撮影セットが壊れゆくさまが写しとられたりと、そこだけでもふつうの「ドラマ」ではありえません。

私も見ていてつい笑ってしまうほど、その面白さに引き込まれていきました。


Tomiいわく、そうした番組の特徴は、「幸せ家族」を描く東京キー局への反抗心から作られたということでしたが、

こうした対抗意識は今でも在阪のテレビ局に残っている気がしますし、

何よりも、テレビの歴史からテレビのいまを考える視点を提示する発表だったのではないでしょうか。


放送当時、番組ファンの間では、菊を演じる中山千夏は男性出演者たちの誰と付き合うのか、

真剣に話し合われていたというエピソードも報告されました。

これを聞いて、ドラマ(物語)の中だけでなく、現実にも付き合うことになるのかに関心が向けられていたのは、

ドラマという枠を超えたテレビの現実性(ドキュメンタリー性)を象徴しているように感じました。

ちなみに「お荷物小荷物」の最終回は、横浜にある放送ライブラリーで視聴できます。


さて、他にも興味深い番組が上映されたので、簡単に紹介していきましょう。


『遠くへ行きたい』「天が近い村 伊那谷の冬」(演出・今野勉 1973年2月25日)

番組は、岩手県の山中にある伊那谷を、伊丹十三が訪れるというものです。

『遠くへ行きたい』はその後の旅番組のはしりとなった番組で、

映像批評や映画監督のインタビューなどでよく見かけるものだったので、視聴できてよかったです。


『天皇の世紀 第二部』「26話 絶筆」(演出・今野勉 1974年3月31日)

歴史小説の舞台となる現地で伊丹十三が、大佛次郎の原文を朗読するドキュメンタリー。

正直、何も知らずに番組を見てしまうと、どうやって理解すればよいのかわからないところが多いです。

上映後、演出の今野勉さんの話を聞いて、番組の面白さがようやく見えてきました。

それはつまり、過去の歴史と現在を、原作の文章、出来事の起こった場所と目の前の人々の姿を通して重ね合わせることが

番組の意図だったということ。

ベンヤミンの思考にも通じるような取り組みは、とても興味深かったです。


『火の国の女――高群逸枝伝』(演出・今野勉 1977年3月13日)

最後は、高群逸枝の伝記をドラマ化した作品。

出演者はたった三人だけで、舞台もほぼ一軒家のなかだけ。

ミニマルな意匠で描きながら、渡辺美佐子、米倉斉加年という実力者の演技が際立って、

重厚さが感じられる作品になっていました。

質疑応答で、どんなに憑依されたように演ずる俳優でも、どこか役柄になりきっていない部分を残しているものだという

今野さんの指摘も興味深かったです。


こんな風にコミューンのメンバーは、学会だけではなく、

広く一般の方にも参加してもらえるような研究会での研究活動に取り組んでいます。

今後は、こうしたお知らせも積極的に行なって行く予定です。お楽しみに!


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