テレビ研究さ・し・す・せ・そ(1)
こんにちは!
ドキュメンタリー映画や番組、映像文化を研究しているMasatoです。
今日は、コミューンの他メンバーも採択されたことのある
「NHK番組アーカイブス学術利用トライアル」という研究制度を紹介します。
「NHKの番組を研究に利用している」と言えばイメージしやすいと思います。
詳しくは(そしてこうした研究に関心のある方は)こちらをご覧ください。
現在、テレビ映像やラジオ音源などを調査するための拠点と言える日本国内の施設は、
横浜の放送ライブラリー、川崎市民ミュージアム及び、各地のNHKで見られるNHKアーカイブスの三つです。
ただ、保存している番組や公開しているものが限られるため、施設に行けばどんな研究でもできるわけではありません。
そのなかでもNHKは、これまで制作してきた番組はもちろん、番組作りのために収集した外部制作の映像なども蓄えていて、
研究者が閲覧・使用できるすばらしい研究環境を整えてくれています。
こうしたたくさんの番組が、日本の文化財として広く(そして無料で)公開された暁には、
NHKは、映像研究に携わる人は絶対に足を運ぶことになる「日本一」の施設になると言っても過言ではありません。
利用できるのはNHKの職員にこれまで限られてきました。
その壁が破られたのは2010年。
「NHK番組アーカイブス・学術利用トライアル」という制度が始まって、
条件を満たした学術研究者であれば番組アーカイブスを利用できるようになりました。
もうこれは、サードインパクト並みの革命です!
こうした施設を利用する機会にめぐまれた私の経験は、
きっと誰かの役に立つと思ったので、コミューンのブログで発信することにしました。
ちなみに、私が翻訳した、
イェール大学教授のアーロン・ジェロー先生とミシガン大学教授のマーク・ノーネス先生の
『日本映画研究へのガイドブック』ではこれ以外にもさまざまな映像アーカイブ施設を紹介しています。
ぜひ、こちらも参考にしてください。
NHK番組アーカイブス学術利用トライアルを利用するには、研究計画書を作成して申請する必要があります。
詳しくはウェブサイトで確認してもらうのが一番ですが、要求されるのはどのような番組を閲覧したいかということです。
番組クロニクルというサイトで検索したり、NHK放送文化研究所というところが発行している論文などにあたって
具体化する必要があります。
ちなみに、テレビ・ドキュメンタリーに関心がある人は、
NHK放送文化研究所刊行の『テレビ・ドキュメンタリーを創った人々』(NHK出版、2016年12月)を
参考文献としてオススメします。
アメリカなど海外の、市民に開かれたアーカイブ事情に詳しい人から見ると、
情報資料の開示を渋るような日本のアーカイブの態度には釈然としないかもしれません。
私も開示が進まない日本のアーカイブ事情にフラストレーションを感じている一人です。
ですが、このように一歩ずつ国内のアーカイブ状況は進展していっているのも事実です。
では、私が利用したときの感想をざっくりと書いておきます。
私は愛宕にある放送博物館で視聴調査を行いました。
その際、割り当てられた個室のPCで利用できたのは、番組利用の発注までできる内部向けのシステムでした。
権限は制限されているので、データベース検索と番組視聴に限られますが、
検索はジャンルや日付など様々な指定ができ、利便性の高いシステムであることは間違いありません。
研究者として、こうしたシステムがNHK以外でも公開されることを願ってやみません。
データベースの検索結果は、表示されるだけなくて、指定すればPDFファイルとして書き出すこともできます。
検索した番組がどういった保存状態かについても記録を残しておくことができるので、
とても便利な機能でした。
ちなみに、個々の番組の基本情報などもPDFに書き出すことができます。
そして私が最も嬉しかったのが、一部の番組に付されている構成表です。
コンピューターで番組を解析し、場面の主要カットをタイムラインごとに自動的に生成したものですが、
その番組を以前に調査した研究者がいるような場合、
その調査内容まで構成表や基本情報に反映されていることがあります。
これに出会うことができたら研究を飛躍的に進めることができます。
実は、コミューンメンバーのTomiと出会ったのも、このNHKのデータベースの中でした。
そして偶然はさらに続き、資料を探そうと隣にある資料室に足を運んだら、Tomi本人に声をかけられたのです。
こんな風に研究者はネットワークを広げていきますが、
コミューンメンバーは特に「ナンパ」をするのが得意なようで、初対面の人とあっという間に仲良くなってしまいます。
そのエネルギーには、時々圧倒されてしまうほどです(笑)
ちょっと長くなってしまったので、今回はここまでにします。
次回は、先に触れた放送博物館の資料室についてです。
お楽しみに!
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